熱分解GC/MS分析とP&T分析(酸素鼻孔チューブ)
熱分解法は、溶媒で溶解し難い試料に不活性ガス中で熱インパクトを与え、低分子化合物を生成させそれをGCで分析する方法です。この分析方法は高分子化合物の同定に多く用いられています。熱分解法では試料量も0.1mg~0.5mg程度で十分なことから微量付着物分析等の微量分析が可能です。
熱分解法での解析は熱分解生成物を確認することで、これらの情報を基にポリマーの組成を推定することが可能です。
医療用に使用される酸素鼻孔チューブはPVC製です。この酸素鼻孔チューブを550℃で熱分解を行い得られたパイログラムを以下に示します。
酸素鼻孔チューブ Py.Temp.: 550℃におけるパイログラム

検出された主な化合物を以下の表に示します。
1, Hydrogen chloride 2, Benzene 3, Toluene 4, 2-Ethylhexene 5, 4-Octene 6, 2-Octene 7, Naphthalene 8, 2-Methylnaphthalene 9, Phthalic anhydride 10, Ethylhexyl benzoate 11, Sulfurous acid, 2-ethylhexyl pentyl ester 12, Palmitic acid, butyl ester 13, Isobutyl stearate 14, Bis(2-ethylhexyl) phthalate |
熱分解生成物より、酸素鼻孔チューブの熱分解生成物からはPVCを代表する化合物が多成分検出されています。強度の強いBis(2-ethylhexyl) phthalateは、ポリ塩化ビニルの可塑剤のフタル酸化合物と推定する事ができます。
次に、酸素鼻孔チューブからの発生ガス分析を行いました。チューブに直接捕集剤(Tenax)を装着し、室温で0.5ℓ/minの医療用酸素を2分間送り酸素鼻孔チューブ通過後の酸素を捕集剤(Tenax)に捕集しました。その後、捕集剤を加熱した熱脱着装置に入れ、捕集剤に捕集された発生ガス成分の熱脱着を行いGC/MS分析を行いました。
操作ブランクを以下に示します。

酸素鼻孔チューブ通過後の捕集剤吸着物のTIC(トータルイオンクロマトグラム)を以下に示します。

1, CO2 2, 室内環境物質 (測定室環境) 3, Cyclohexanone 4, 2,2,4,6,6Pentamethylheptane 5, 2-Ethylhexanol 6, BHT(酸化防止剤) 7, Bis(2-ethylhexyl) phthalate(可塑剤) 8, Squalene |
Cyclohexanoneが多量に検出され、更に熱分解GC/MS分析でも検出されている樹脂の可塑剤のBis(2-ethylhexyl) phthalateも検出されています。
尚、検出された化合物の濃度に関しては不明です。
参考に、操作ブランクと、捕集剤吸着物の比較TICを以下に示します。
比較 TIC
